はじめに
就労継続支援や自立訓練、共同生活援助など、通所・入所系の障害福祉サービスでは、利用者へ食事を提供する事業者も多いと思います。
施設内で調理をして食事を提供する場合は、障害福祉課への指定申請だけでなく
保健所に対して給食施設の届出が必要なのはご存知でしょうか。
また、この給食施設の届出は「食品衛生法に基づく届出」と「健康増進法に基づく届出」の2種類あります。
本記事では、特にこれから開業を考えている事業者の方に向け、それぞれの届出について解説します。
2つの届出の共通点と違い
「食品衛生法に基づく届出」と「健康増進法に基づく届出」、どちらの届出も主に保健所が受付窓口になる点等が共通しています。
また詳しくは後述しますが、届出が必要な施設かどうかの判断は
どちらも「1回・1日あたりの提供する食数」と「特定の人に継続的に提供しているか」が基準となっています。
食数は、基本的におやつは含まず、朝食で◯食・昼食で◯食・夕食で◯食というように数えます。
一方、目的や根拠となる法律が異なります。簡単にまとめると次のとおりです。
食品衛生法に基づく届出
先述のとおり、1回・1日あたりの提供する食数によって届出が必要かどうかを判断するのですが、具体的な基準は以下のとおりです。
つまり、施設で食事は提供するものの、食数が少ない場合は届出がいらないということですね。
なお食品衛生法に基づく届出の場合は、職員へ提供する食数もカウントして判断する必要があります。
また届出が必要な施設に該当する場合には、次の対応も義務付けられます。
① HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理を行う
HACCP(ハサップ)とは簡単に言うと、食品の製造や提供の過程で発生しうる危険なポイントを見つけてしっかりと管理する方法です。
あくまでも衛生管理のやり方なので、導入するためになにか設備を新しく入れたり変更する必要は基本的にありません。
HACCP(ハサップ)を導入することで、安全な食事の提供はもちろん、職員の衛生管理に対する意識が上がったり、利用者やその家族へ衛生管理のアピールにつながる等のメリットがあります。
具体的には厚生労働省の下記ページにも説明がありますのでよろしければご参考ください。
厚生労働省HP | HACCPに沿った衛生管理の制度化について
② 食品衛生責任者を1人決める
食品衛生責任者の役割は、主に衛生管理の指導や監督などです。
次のような有資格者は、都道府県等が行っている講習を受けずに食品衛生責任者になれます。
・栄養士、管理栄養士、調理師、製菓衛生師、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師など
・食品衛生監視員・食品衛生管理者の資格要件を満たす人
資格がない場合でも、都道府県等が実施している食品衛生責任者養成講習を受ければ大丈夫です。
自治体により異なりますが、だいたい1日(6~7時間程度)で修了できる講習なので、法人の代表や管理者の方が受けておくと良いかと思います。
なお、食品衛生責任者になったとしても人員基準の常勤換算には影響はないのでご安心ください。
注意点
届出の必要がない施設の場合、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理や食品衛生責任者の選任は義務付けられませんが、自主的に衛生管理の徹底・向上に努めることとされています。
例えば東京都では、小規模施設向けに衛生管理のポイントや手順の資料を公開しています。よろしければご参考ください。
東京都リーフレット | 小規模給食、ボランティア給食を始められる皆さんへ
健康増進法に基づく届出
届出が必要かどうかの具体的な判断基準は以下のとおりです。
食品衛生法に基づく届出と同じく、施設で提供する食数が少ない場合は届出がいらないということですね。
なお、健康増進法に基づく届出では、職員に職員へ提供する食数はカウントしません。
※「その他給食施設」について
自治体により施設種類の呼称や届出の名称が異なります。
また、基準となる食数が違ったり、その他給食施設にはそもそも届出を義務付けていない自治体もあります。
個々の自治体の条例等によって決められているため、必ず管轄の保健所へご確認をお願いします。
さいごに
この記事のポイントをまとめると次のとおりです。
・障害福祉事業者で、1回20食以上または1日50食以上の食事を提供する場合、食品衛生法や健康増進法に基づく届出が必要となる可能性があります。
・食事提供に関する手続きは管轄の保健所が担当です。事前に相談し、要件などを確認することが大切です。
・HACCPに基づく衛生管理や、食品衛生責任者の選任が必要な場合があります。
各届出を適切に行うことで、利用者に安全で安心な食事を提供することが可能となります。
利用者の健康を守るため、必要な手続きや衛生管理を徹底していただければと思います。
参考: