処遇改善加算の制度変遷につき簡単解説!

はじめに

高齢者や障がいを持った方への介護の仕事は、社会にとってなくてはならない大切な役割を担っています。

しかし、現場で働く介護職員への給料や待遇などに関してはまだまだ多くの課題があるのが現状です。

 

そうした状況を改善するために作られた制度の一つに「処遇改善加算」がありますが、特にここ数年は毎年のように変更があり

最新の情報をキャッチすることが難しくなってきています。

 

そのため本記事では、これまで処遇改善加算がどのように変化してきたかを整理しました。

処遇改善加算の変遷をたどることで、現在の制度を理解する一助となれば幸いです。

 

介護職員処遇改善加算の変遷(平成24年度~令和7年度)

1. 処遇改善加算ができた背景・目的

冒頭でも触れたように、処遇改善加算は、介護職員の給与を改善し、安定的な労働環境を整えることを目的として作られたものです。

この背景には、仕事の負担が大きいにもかかわらず、介護職員へ給与が十分に支払われていない現状が続いたことによって問題になっていた、介護職員の人手不足や離職率の高さがありました。

 

質の高い介護サービスを提供するためにも介護職員の処遇改善が急務とされてきた中で、平成21年度介護職員処遇改善交付金ができたのが処遇改善加算の始まりです。

この交付金によって、介護・障害福祉の事業所は一定の要件を満たすことで、介護職員の賃金を引き上げるための加算を受け取ることができるようになりました。

 

その後、より安定した支援策として、平成24年度介護職員処遇改善加算がスタートしました。

 

2. 各年度の変遷

平成24年度:処遇改善加算の誕生

介護職員の給料を上げるための加算制度が始まりました。

ポイントは次のとおりです。

・ 区分は処遇改善加算(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)の3つ

・ 要件の一つに、「定量的要件」(※)があった

 定量的要件:平成23年10月以降に実施した処遇改善(賃金改善を除く。)の内容と、改善にかかった費用の概算額を全ての福祉・介護職員に周知していること。

 

また、次の要件は今と変わっていません。

・処遇改善加算として受け取った額より1円でも多く、給与として支給すること

・賃金改善は、基本給、手当、賞与等の中から対象とする賃金項目を特定して行うこと

・これまでの賃金の水準から下げてはいけないこと

・賃金改善の対象は介護職員とすること

・キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ

 

加算率(金額)は(Ⅰ)→(Ⅱ)→(Ⅲ)の順に高くなっており、

キャリアパス要件と、定量的要件の両方を満たせていれば区分(Ⅰ)、片方を満たす場合には(Ⅱ)、どちらも満たせていなければ(Ⅲ)といった具合です。

現在の処遇改善加算の基礎となっていることが分かりますね。

 

なお、様々な理由によって交付金や処遇改善加算を申請していない事業所に対する配慮として「処遇改善特別加算」もありました。

これは介護職員以外の給与にもあてることができ、キャリアパス要件や定量的要件を満たさなくても取得できるものでした。

ただし加算率は処遇改善加算と比べてかなり低く、だいたい区分(Ⅰ)の5分の1程度でした。

 

平成27年度:加算額の増加

職員の給料をさらに引き上げるため、より加算の高い新たな区分が一つ加えられました

平成24年度から変わったのは次の点です。

・ 区分は処遇改善加算(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)・(Ⅳ)の4つになった

・ 定量的要件が「職場環境等要件」という名称に変わり、事業所が取り組んでいることを職員へ周知することが必要になった

 

今でも職場環境等要件はありますが、具体的取り組みを見てみると、今よりも数が少なかったことが分かります。

参考:平成27年度 職場環境等要件(「老発0331第34号(平成27年3月31日)より抜粋」)

 

平成29年度:キャリアアップの強化

さらに加算の高い新たな区分が一つ加えられるとともに、昇給の仕組みを明確にし、職員のキャリアアップ支援が強化されました。

平成27年度から変わったのは次の点です。

・ 区分は処遇改善加算(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)・(Ⅳ)・(Ⅴ)の5つになった

・ 「キャリアパス要件Ⅲ」が追加された

 

令和元年度:特定処遇改善加算の導入

経験やスキルのある職員への給料アップを重点的に実施するための「特定処遇改善加算」ができました。

ここでいう経験やスキルのある職員とは、介護福祉士の資格を持っていて、介護の経験が10年以上ある職員と定義づけられました。

(ただし、介護の経験に関しては必ず10年以上無くてもOKでした)

 

平成29年度から変わったのは次の点です。

・ 新たに特定処遇改善加算(Ⅰ)・(Ⅱ)ができた

サービス提供体制強化加算や特定事業所加算の最も上位の区分を取っている場合には特定処遇改善加算(Ⅰ)、そうではない場合には(Ⅱ)が取れるという違いでした。

 

また、特定処遇改善加算は「経験やスキルのある職員」に対して多く配分できるよう、配分ルールが細かく決められていました。

 

※ 特定処遇改善加算の配分ルール

① 職員を「A:経験やスキルのある職員」・「B:その他の介護職員」・「C:介護職員以外の職員」の3つにグループ分けする

② グループごとの賃金改善額の平均が以下になるように配分する

 A:B:C=2以上:1:0.5以下

③ Aグループのうち1人以上は、月額8万円の賃金増又は年収440万円までの賃金増が必要。

(小規模な事業所等はこの条件を満たさなくてもよいという例外あり)

 

事務職や調理員など介護職員以外にも加算を配分することが出来るようになったのがこの特定処遇改善加算からなので、大きな転換点の一つと言えるでしょう。

 

令和3年度:制度の簡素化

制度が一部整理され、取得しやすく改良されました。

令和元年度から変わったのは次の点です。

 処遇改善加算(Ⅳ)と(Ⅴ)が廃止された
 ※上位区分の取得が進んだため

・ 特定処遇改善加算で、職員間の配分ルールが緩和された(※1)

 職場環境等要件の取り組みが見直された(※2)

 

※1 特定処遇改善加算の配分ルール(緩和後)

グループ(A・B・C)ごとの賃金の賃金改善額の平均が、
「AはBの2倍以上」 →「AはBより高く」に変更されました。

つまり、A>B、かつB:C=1:0.5以下

 

※2 職場環境等要件

内容が見直され、今と同じ6つの区分から具体的な取り組みを選択する形になりました。

参考:令和3年度 職場環境等要件(「老発0316第34号(令和3年3月16日)より抜粋」)

 

令和4年度:ベースアップ等加算の導入

処遇改善をさらに進めるため、新しくベースアップ等加算がスタートしました。

加算として制度化される前段階として、「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」が支給されたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

交付金やベースアップ等加算の要件は次のとおりです。

 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のどれかを取得していること

・ 交付金、ベースアップ等加算の全額を職員の賃金改善にあてること

 賃金改善の合計額のうち、3分の2以上をベースアップ等にあてること

 

ここで初めて、「ベースアップ等」という概念がでてきました。

ベースアップ等とは、「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」の引上げを指します。

 

職員が毎月もらう給与を底上げすることによって、職場への定着率などを高めていきたいという国の意図が感じられますね。

 

令和6年度:加算の1本化

さまざまな角度から処遇改善を進める制度が作られてきましたが、結局「処遇改善加算」・「特定処遇改善加算」・「ベースアップ等支援加算」の3つに分かれているため、毎年の計画書提出や実績報告書等の事務作業が煩雑化してしまっていました。

そこで、3つの加算を1つにまとめ、シンプルな仕組みに変更されました

これがここ数年で最も大きな変更ではないかと思います。

令和4年度から変わったのは次の点です。

 新処遇改善加算として、(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)・(Ⅳ)の4区分にまとめられた

・ キャリアパス要件も整理され、Ⅰ~Ⅴとなった(※1)

 賃金改善についてのルールも「月額賃金改善要件Ⅰ・Ⅱ」にまとめられた(※2)

・ 職場環境等要件は取り組みの数が変更された(※3)

※1 キャリアパス要件Ⅰ~Ⅴ

何か新しい要件が出来たわけではなく、これまでのルールが整理されたというイメージでOKです。

具体的には、キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲは旧処遇改善加算と同じです。

キャリアパス要件Ⅳは、旧特定処遇改善加算の「経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること」という要件が引き継がれています。

(これまでと同じく、小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除されます。)

キャリアパス要件Ⅴも旧特定処遇改善加算の要件を引き継いでおり、特定事業所加算やサービス提供体制加算を取っていると満たすことができます。

 

※2 月額賃金改善要件Ⅰ・Ⅱ

賃金改善については非常にシンプルな要件になりました。

月額賃金改善要件Ⅰ:新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上をベースアップにあてる

月額賃金改善要件Ⅱ:前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上を新たなベースアップにあてる

(旧ベースアップ等支援加算を取っていない事業所に限って適用)

 

※3 職場環境等要件

いくつ取り組みを行うかによって、取れる加算の区分が次のように異なります。

ただし、令和6年度中は猶予措置がありました。

処遇改善加算Ⅰ・Ⅱの場合

①6つの区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。

②情報公表システム等で、実施した取組の内容について具体的に公表する。

※R6年度中は区分ごと1以上、取組の具体的な内容の公表は不要

新処遇改善加算Ⅲ・Ⅳの場合

6つの区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。

※R6年度中は全体で1以上

 

令和7年度:新ルールの本格適用

令和6年度に導入された新しい要件が正式に運用開始されます。

詳細はこちらの記事でまとめていますのでご覧ください。

また、新たに「介護人材確保・職場環境等改善事業補助金」も支給されることが決定しており、これは今までと違い職員への給与以外にも使うことができる画期的なものとなっています。

補助金についての詳細はこちらから御覧ください。

 

参考:キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲについて

キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲの内容は以下のとおりです。

・キャリアパス要件Ⅰ

介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を決め、それらに応じた賃金体系を整備する。

いわゆる「キャリアパス表」と「賃金体系表」の作成。

 

・キャリアパス要件Ⅱ

介護職員の資質向上の目標や、以下のどちらかに関する具体的な計画をたてる。

また、その計画を実行するため研修の実施、または研修の機会を確保する。

 

① 事業所主体で開催する研修機会の提供、または技術指導等の実施、介護職員の能力評価

② 介護職員が資格を取得するための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助など)

 

・キャリアパス要件Ⅲ

介護職員が昇給する仕組みを整える。(次の3つのうちどれか1つ以上でOK)

 

① 経験に応じて昇給する仕組み
② 資格等に応じて昇給する仕組み
③ 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

平成24年度から始まった処遇改善加算は、年々改良されながら、より公平で柔軟な仕組みへと進化してきました。

今後も現場の実態に即して制度が見直され、事業者はより働きやすい環境の整備が重要となることが予想されます。

本記事によって処遇改善加算の理解が深まっていれば幸いです。

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