はじめに
介護・障害福祉事業者に対して、ハラスメント対策のために必要な措置を行うことが義務付けられていることはご存知でしょうか。
パワハラ、セクハラ、マタハラなど、様々なハラスメントが近年増加していることを背景として、令和3年度から義務化されました。
例えば訪問介護の場合、下記が義務付けの根拠となっています。
その他にも虐待防止や感染症対策等、事業者に義務付けられている取り組みがたくさんあり、どんな対応をすればいいのか混乱している方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事ではハラスメント対策について事業者に義務付けられていることを、なるべく簡潔に解説します。
ハラスメントの定義
一般的に、介護・障害福祉の現場におけるハラスメントは、上司から部下に対してや、利用者・ご家族等から職員等に対する次のような行為を指します。
厚生労働省資料 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル より引用
このような行為は従業員を傷つけ、離職の原因にもなりうるものです。
また中には、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強制わいせつ罪等の犯罪になりうる行為もあります。
そのため事業者は従業員を守るためにハラスメント対策を徹底することが大切です。
具体的な事業者の義務は?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① ハラスメントに対する事業所の方針等の明確化、その周知・啓発
まず方針等の明確化ですが、法人としてのハラスメントに対する考え方、対応方法などを社内規定等として作成するのが一般的です。
社長の頭の中に方針があるだけでは明確化しているとは言えないので、必ず書面に書き起こしましょう。
作成する際は、最低限以下のような内容を入れるのがベターです。
・職場でのハラスメント行為を一切許さないこと
・ハラスメントを防止するための対策
(日頃から従業員と役職者の間で適切な意思疎通を図る、利用者や家族へ説明を行うなど)
・ハラスメントの相談窓口について
(窓口の担当者は誰か、相談方法など)
・ハラスメントに対する判断や対応の決定方法
次に周知・啓発ですが、作成した社内規定などを必ず職員へ説明しましょう。
日々業務で忙しい中時間を取るのは大変なことだと思いますが、
定例会議の中で説明したり、事業所内への掲示・メール等で書面を送るなど効率的に周知していただければと思います。
なお、「ハラスメントに関する研修は義務なのか?」と質問を受けることが多いのですが、研修の実施は義務ではありません。
あくまでも周知・啓発の一つの手段として、事業所内で研修をすることが有効だとされています。
研修をしていないからといって運営指導で指摘を受けることはほぼ無い(あったとしてもアドバイス程度)と思います。
研修を行う場合には、厚生労働省のホームページで研修用資料や事例集などが公開されているのでぜひご参考ください。
② 相談・苦情に対して適切に対応するために必要な体制の整備
ハラスメントを受けた従業員が安心して相談できる体制を整えましょう。
管理者が担当することが多いですが、相談窓口は誰になるのかを決めて
職員にへ周知することが重要です。
その他、例えば以下のような取り組みも有効です。
・外部の専門機関(弁護士、カウンセラー)を活用した窓口を設置する
・匿名で相談できるような仕組みを取り入れる
カスタマーハラスメント対策は「推奨」
カスタマーハラスメントは、特に利用者や家族等から職員に対する著しい迷惑行為を指します。
例えば、長時間にわたるクレームや、難癖をつけ利用料を払わないなど
単なる嫌がらせともとれる行為が当てはまります。
こちらに関しては現状義務ではないのですが、カスタマーハラスメント防止のための方針の明確化等も「推奨」されています。
カスタマーハラスメントも同様に厚生労働省が資料を公開しているので
よろしければご参考ください。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
介護・障害福祉事業者にとって、ハラスメント対策は従業員を守り、職場環境を健全に保つために不可欠な取り組みです。
また法的に義務付けられている対応を押さえておくことは、ハラスメントが実際に発生してしまった時の迅速な対応にも繋がります。
本記事を参考に、今一度、適切な対策が取れているか見直ししていただけると幸いです。