【障害福祉】常勤換算の特例とは?適用方法やルールを解説

はじめに

障害福祉サービスにおいて度々出でくる「常勤・非常勤」や「常勤換算」。

人員基準を満たせるか、つまり新たに指定受けたりを指定を維持できるかどうかに大きく関わる考え方です。

この言葉に頭を悩ませられた経験のある事業者の方は多いのでは無いでしょうか。

 

例えば就労継続支援A型や生活介護では、サービス管理責任者を常勤で「1以上」配置しないと人員基準を満たしません。

常勤で「1」とは多くの場合、ある人が働く週の労働時間が40時間(月160時間)に達している状態を指します。

 

サービス管理責任者といえば、介護や障害福祉の実務経験が最低でも3年以上必要なのに加えて、基礎研修・実践研修まで修了しないとなれない、非常にハードルの高い職種です。

もし、サービス管理責任者になれる条件は揃っているのに常勤では勤務ができない方がいた場合、事業者はその方で人員基準を満たすことを諦めなければならないのでしょうか。

 

答えはノーです。

一定の条件に当てはまる場合、週30時間以上の勤務でも常勤で「1」とカウントすることが出来ます

それは「育児・介護・自身の治療のための短時間勤務制度」が適用される場合です。

本記事ではこの特例について詳しく解説します。

 

常勤換算とは

まずは、常勤換算の考え方をおさらいしましょう。

常勤換算は以下のように計算します。

 

「常勤換算数」=「事業所の従業者全ての1ヶ月あたりの勤務時間数」÷「事業所の常勤従業者が勤務すべき1ヶ月あたりの時間数(所定労働時間)

 

一般的に所定労働時間は週40時間(月160時間)の事業所が多いと思いますが、

その場合は以下のように計算できます。

・週40時間(月160時間)勤務の職員:160÷160=常勤換算1

・週30時間(月120時間)勤務の職員:120÷160=常勤換算0.75

・週20時間(月80時間)勤務の職員:80÷160=常勤換算0.5

 

関連記事:障害福祉サービス「常勤換算」を分かりやすく解説

 

短時間勤務制度の特例

では、冒頭説明したように週30時間以上の勤務でも常勤で「1」とカウントすることが出来るというのはそもそもどういうことなのでしょうか。

 

会社には、従業員が育児・介護と仕事を両立するための支援が義務付けられており、子育て中の親や家族の介護を担う従業員本人が申し出た場合、一定の条件のもとで所定労働時間を短縮すること等が必要です。

※本人の治療のための所定労働時間の短縮は法的な義務ではなく、会社が自主的に導入するものとなっています。

そして厚生労働省の通知では、常勤換算方法の定義の中に以下の赤字のただし書きがあります。

 

(1)「常勤換算方法」
(一部省略)
ただし、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和 47 年法律第 113 号)第 13 条第1項に規定する措置(以下「母性健康管理措置」という。)又は育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第 76 号。以下「育児・介護休業法」という。)第 23 条第1項、同条第3項若しくは同法第 24 条に規定する所定労働時間の短縮等の措置若しくは厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に沿って事業者が自主的に設ける所定労働時間の短縮措置(以下「育児、介護及び治療のための所定労働時間の短縮等の措置」という。)が講じられている場合、30 時間以上の勤務で、常勤換算方法での計算に当たり、常勤の従業者が勤務すべき時間数を満たしたものとし、1として取り扱うことを可能とする。

引用:平成 18 年 12 月6日障発第 1206001 号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知より抜粋

 

つまり、週の所定労働時間が40時間の事業所において、従業員本人の申し出によって一定の条件下で時短勤務をさせる場合

その人の週の労働時間が30時間以上であれば、本来の所定労働時間である40時間に達していなくても常勤で「1」とカウントすることができるということです。

 

短時間勤務制度の対象者と条件

上記のただし書きにあるとおり、特例が認められるのは以下を根拠とした短時間勤務制度の場合のみです。

① 母性健康管理措置(男女雇用機会均等法 第13条)

② 育児・介護休業法(第23条・第24条)

③ 厚生労働省「治療と仕事の両立支援ガイドライン」に基づく措置

 

それぞれの概要を確認しましょう。

なお、いずれも従業員本人からの希望によって利用できる制度であることが前提となっています。

 

母性健康管理措置

 

対象者:妊娠中または出産後の女性従業員

概要:会社には 、女性労働者が妊産婦のための保健指導や健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるよう、時差出勤・短時間勤務・休憩時間の延長などの措置をおこなう義務があります。

 

参考:厚生労働省|女性労働者の母性健康管理のために

 

育児・介護休業法

 

◯育児の場合

 対象者:以下のすべてに当てはまる従業員

①3歳未満の子どもを養育していること

②1日の労働時間が6時間を超えていること

③日々雇用の従業員ではないこと(短期アルバイトなどは対象外)

④制度適用期間中に育児休業を取得していないこと(産後パパ育休含む)

⑤労使協定で除外されていないこと(以下に該当しないこと)
 ・会社での雇用期間が1年未満
 ・週2日以下しか働かない
 ・仕事内容や職場の状況から、短時間勤務が難しい職種に就いている

 

 概要:会社には、従業員が仕事をしつつ子育てをしやすくするための短時間勤務制度を作ることが義務付けられています。

 

◯介護の場合

 対象者:以下のすべてに当てはまる従業員

①要介護状態にある家族を介護していること

②日々雇用の従業員ではないこと(短期アルバイトなどは対象外)

③労使協定で除外されていないこと(以下に該当しないこと)
 ・会社での雇用期間が1年未満
 ・週2日以下しか働かない
 ・仕事内容や職場の状況から、短時間勤務が難しい職種に就いている

 

 概要:会社には、従業員が仕事をしつつ家族の介護をしやすくするための短時間勤務制度などを作ることが義務付けられています。

短時間勤務制度のほか、フレックスタイム制度や時差出勤制度、介護費用の助成の中から1つ以上利用できるようにすることが必要です。

また対象家族1人につき、制度利用開始の日から連続3年以上の期間中に2回以上利用できる制度となっていることも条件です。

 

参考:厚生労働省|育児・介護休業法のあらまし

 

「治療と仕事の両立支援ガイドライン」に基づく措置

 

対象者:病気の治療をしながら働く従業員

概要:会社が自主的に、従業員本人が治療と仕事を両立しやすい制度(短時間勤務制度や時差出勤制度、在宅勤務、試し出勤制度など)を設けることを推奨するガイドラインです。

法律で義務付けられているわけではありませんが、多くの企業がこれに基づき短時間勤務を導入しています。

 

参考:厚生労働省|事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン

 

制度の作り方

就業規則等で明文化することが必要です

短時間勤務制度を利用する際の社内手続きやルールについて、

ガイドラインを参考にしたり、社会保険労務士などの専門家へ相談し作成していただければと思います。

 

障害福祉の手続きや運営指導などで確認されることもありますので、必ず書面で作成してください。

 

さいごに

 

いかがでしたでしょうか。

短時間勤務制度を活用することは、人員基準を満たす上でも、従業員の働きやすさを実現する上でも有効な手段となり得ます。

ぜひ本記事を参考に導入を検討していただければと思います。

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