退職後の傷病手当金!メリット・デメリットを初心者向けに

人手不足が深刻な介護や障害福祉業界。
 
従業員から「辞めたい」という言葉は、事業者にとって大きな痛手です。
 
理由は様々でしょうが、中には、病気やケガを抱え、働き続けることに不安を感じているケースもあるかもしれません。
 
「退職も考えている…」 そんな声が聞こえたら、ぜひ「傷病手当金」という制度を思い出してください
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった従業員に対し、健康保険から給付金が支給される制度です。
 
傷病手当金くらい知っているという声が聞こえてきそうですが、退職後も貰えることと貰うための条件や注意点までご存知の方はそれほど多くいらっしゃらないのではないでしょうか
 
条件を満たせば、退職後も一定期間、この給付金を受け取ることができます。
 
従業員にとっては、安心して療養に専念できるだけでなく、経済的な不安を軽減でき、事業者にとっても、従業員の離職を防ぎ、貴重な人材を守ることができるという大きなメリットがあります。在籍する限りは支給手続も基本的には会社側が行うもののため不安は更に小さくなるでしょう。
 
しかしこの傷病手当金は会社を退職した後でも要件を満たせば支給を受けることが出来るものです。
 
であれば従業員の辞めたいも引き止められないのでは?と思ったかたもいるかもしれません。とはいえ退職後の手続きはリスクやデメリットはあります。もし辞めたいという従業員を心配する場合には、この記事内にかかれていることを伝えてもいいでしょう。治療が終われば復帰する可能性があるからです。
 
そこで本コンテンツでは、介護・障害福祉事業者が知っておくべき、傷病手当金の概要と活用方法をまとめました。
 
具体的には、以下の内容を取り上げます。
 
傷病手当金とは?支給額や受給期間は?
退職後も受給できるケースとは?
任意継続被保険者制度の活用
 
従業員の不安を解消し、働きやすい環境を整えるために、ぜひ本コンテンツをご活用ください。
 

傷病手当金の基礎知識

 
まずは傷病手当金の基礎知識を確認しましょう。
 
傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなった場合に、健康保険法から支給される給付金のことです。 従業員が安心して療養に専念できるよう、経済的な面をサポートすることができます。
 
社会保険に加入していれば役員も社員を対象です。逆にパート・アルバイトなど非常勤で働く従業員で社会保険に加入していないのであれば支給を受けることは出来ません。
 
以上踏まえ傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
 
・業務外の病気やケガで療養中であること
・療養のために労務不能であること
・4日以上仕事を休んでいること
・給与の支払いがないこと
 
この記事では退職後の傷病手当金につき解説するの基本的な知識についてはざっと確認して終わりです。もらえる金額は大体給料の67%相当になり、最長で1年6ヶ月貰えます。
 

業務中に生じた病気やケガは労災が対象になるだけご確認ください。簡単にいえば、社会保険に加入している従業員が業務外のケガで仕事が全くできずに、会社が給料を支払っていない場合には対象となり得るということです。

では退職後の傷病手当金をもらうための要件は?

会社を辞めれば社会保険に加入せず国民健康保険に加入することになります。すると社会保険の給付である以上は給付金はもらえません。
 
しかしそれだと従業員にとって優しくないため、上記の条件に加えて次の2つの要件を満たせば退職後も傷病手当金を貰えます。
 

①退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者期間があること。(任意継続被保険者期間は除く)

②退職時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。

 
継続して1年以上とあるのは、別の会社と通算しても問題ありませんが、1日でも国民健康保険に加入していればその期間は途絶えます。社会保険の加入期間が不明な方は年金番号を控えて年金事務所にいけば履歴照会が可能です。
 
つまり、退職前にすでに傷病手当金の受給資格を満たしていることが重要です。
 

退職後の傷病手当金の支給申請のデメリット

 
では退職後も支給を受けることが可能なことはわかりました。
 
では会社に在籍して支給を受けるケースと退職後の傷病手当金を選択し自分で申請する場合を比較した場合にどんなデメリットがあるでしょうか。大きく6つあると考えます。
 
 
◆退職後の傷病手当金を選択するデメリット◆
①自分で全部手続きしないといけない
 
②社会保険料の会社負担がなくなり全額自己負担になる
 
③被扶養者がいる場合に、扶養を外すしかなくなる
 
④雇用保険の失業手当と同時に傷病手当金は貰えない
 
⑤老齢遠近や障害厚生年金の支給を受けている場合に減額される
 
⑥再就職すると継続給付は貰えなくなる
 
それぞれ確認しましょう。
 

①自分で全部手続きしないといけない

在籍している限りは会社が支給申請手続きをします。
 
従業員が医師から証明書を貰ってくる作業はいずれにせよ必要ですが、病気やケガの中自ら期間を守り申請することは大変だと思うのは一般的ではないでしょうか。在籍していれば給料の67%を1年半もらえる権利を会社側が手続きしてくれることを放棄することになります。
 
また会社は総務部や顧問社労士といった事務手続に特化した人がいることもあるので事務負担的な観点で言えば辞める従業員にとってデメリットといえます。
 

②社会保険料の会社負担がなくなり全額自己負担になる

在職中は、健康保険料は会社と折半で負担していましたが、退職後は全額自己負担となります。傷病手当金を受給していても、健康保険料の支払いは免除されません。国民健康保険に切り替えてもいいですが、国民年金保険だと将来受け取れる年金額もへります。
 
在籍していても社会保険料は発生しますが、会社の負担分は会社が支払うので自己負担分だけで済みます。
 
経済的な負担が増えるリスクがあることは伝えておきましょう。
 
 

③被扶養者がいる場合に、扶養を外すことになることも

退職後は何もしなければ被保険者ではなくなるため、国民年金保険に切り替えられ社会保険の扶養が外され、今まで発生しなかった保険料が発生するケースがあります。
 
また配偶者や子供が扶養に入っている場合は、国民健康保険への加入など、別途手続きが必要です
 
保険料をトータルで低く抑える場合には社会保険に加入していることが正解の家族の生活にも影響が出てしまう可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
 

④雇用保険の失業手当と同時に傷病手当金は貰えない

病手当金を受給している間は、雇用保険の失業手当を受給することはできません。 これは、傷病手当金は「病気やケガで働けない期間」に支給されるものであり、失業手当は「仕事を探している期間」に支給されるものだからです。 どちらか一方を選択する必要があります。
 
しかし雇用保険の失業給付は受給期間の延長手続きが出来ます。
 
個人的には傷病手当金の支給を優先して、その後ハローワークにいき受給期間の延長届出を出せば失業給付も受けられるためことらがいいという意見です。最終的に従業員が辞めることを想定していますが、辞めなければ選択肢として残るためお伝えした法がいいと思います。
 
 

⑤老齢年金や障害厚生年金の支給を受けている場合に減額される

退職後に傷病手当金の継続給付を受けている人が老齢厚生年金などの老齢退職年金の受給者になった場合、傷病手当金は支給されません。 ただし、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低い場合は、差額が支給されます。
 
つまり、年金を受給していると、傷病手当金の支給額が減額されたり、支給停止となる可能性があります。
 
両方もらえると思って辞めるとライフプランに狂いが生じるので、併給調整といって傷病手当金を貰っている間は貰えないものがあるので在職中している方が計画が立てやすいとう考えです。
 

⑥再就職すると継続給付は貰えなくなる

傷病手当金は、新たな事業所で勤務(再就職)すると受給できなくなります。
 
退職後に傷病手当金を受給していても、再就職が決まれば、その時点で支給は打ち切られるといことです。これも知らなかったり、とりあえず他の会社に入社して働く時期はまだ先ということでも貰えなくなるリスクがあります。
 
せっかく傷病手当金を受給していても、再就職によって経済的な基盤が不安定になる可能性がある点は、注意が必要です。
 
以上です。
 
このように退職後の失業給付は従業員の皆さんが思っているより甘くなく(?)給付を継続的に受けたいのであれば自ら情報を積極的に収集しないといけません。これが在籍している限りにおいては事務方や顧問社労士が気をつける点を把握していますので、もし治療がそれほど長引かないので退職を引き止めたい場合には説得の一助になれば幸いです。
 

まとめ

傷病手当金は、病気やケガで退職した方の生活を支えるための重要な保険制度です。
 
しかし、退職後に受給する場合には、いくつかのリスク・デメリットがあります。会社側からすれば病気やケガで生活の保障がままならない中、退職をすると相談を受けているわけです。せっかく健康保険という保険に加入しているのであれば、保険料に見合った給付を受けて生活を整うために活用すべきではないでしょうか。
 
その給付が退職後だとハードルが上がるということを事業主が理解したうえで、従業員に適宜伝えられることが望ましいと思いこのコンテンツを書きました。
 
それでも退職するという場合には一点重要なことを書きます。それは退職日以降も傷病手当金を受給するためには、退職日に出勤してはいけないということです。これは1時間であっても認められません。
 
継続して労務不能といえないからです。ご参考までに。お疲れ様でした。
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