令和7年1月から、介護事業者に対して「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」を通じた経営情報の報告が義務化されました。
初回の報告は令和7年3月31日までですが、まだどのようなシステムなのか分からない事業者の方も多いのではないでしょうか。
今回はこの新しい制度・システムについて、目的や報告方法、事業者が用意すべきものなどを解説します。
※制度について、厚生労働省のページでも詳細が確認できます。ぜひご参考ください。
制度の目的
厚生労働省の発表によると、この制度は介護サービスを提供する事業者の経営情報を集め、集めたデータを整理・分析した結果を公表することが大きな目的のようです。
というのも、これまでも介護事業者の経営情報(収支状況・職員・提供しているサービスの実績など)の調査は行われていたのですが、3年に1度、ランダムに選ばれた事業者だけが回答するものでした。
調査の回答は様々な政策や法改正、介護報酬の改定のために利用されています。
ですが最近は物価の上昇や災害、新しい感染症などで経営に影響が出やすくなっており、3年に1度の調査だけでは対応しきれていないことが問題視されていました。
そこで、毎年度事業者が報告を行う仕組みにして、最新の状況を素早く把握し、的確な支援策を検討できるようにすることを目指しているということです。
そして経営情報を報告するために作られたのが「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」です。(以下、介護経営DBとします)
対象事業者は?
原則、全ての介護事業者に対して介護経営DB上での報告が義務付けられています。
ただし次のどちらかに当てはまる事業者は報告の義務はありません。
なお、基本的に事業所(サービス)単位で報告が必要ですが、総合事業などサービスによっては報告が不要なものもあります。
詳しくは厚生労働省発表の留意事項などをご確認ください。
報告期限は?
年に1度、決算終了後3ヶ月以内に報告が必要です。
つまり、決算月が6月の法人の場合、9月末までに報告するということです。
事業者が用意すべきものは?
① GビズIDプライムアカウント
介護経営DBは、GビズIDプライムのアカウントがないと操作することが出来ません。
GビズIDプライムアカウントの取得方法はこちらをご参考ください。
アカウントの取得は無料で、オンラインであれば最短で即日取得することができます。
② 損益計算書等
法人の確定申告書類の中の、損益計算書が必要です。
登録が必須な項目は次のとおりです。
損益計算書上で計上されていない項目は「0円」と入力すればOKです。
また、上記以外にも登録項目がありますが、すべて任意となっています。
③ 職員数の情報(職種ごと、常勤か非常勤か)
管理者・看護師・介護職員・事務職員など、職種ごとに常勤で◯名、非常勤で◯名といったように整理しましょう。
確認するのは、報告する決算年度の初月に給与を支払った職員数のみです。
例えば決算月が3月の法人の場合、初回の報告では令和5年4月に給与を支払った職員で考えます。
もし給与の支払いが月末締め・翌月払いの場合は、令和5年5月に給与を支払った職員で考えてください。
参考:厚生労働省|介護サービス事業者経営情報の報告等に関するQ&A (問3-7)
※なお、職員の賃金総額なども、任意ですが入力する項目があります
事業所が複数ある場合は?
先述のとおり、原則として報告は事業所単位です。
つまり、複数の事業所(※)がある場合はサービスごとに会計を分ける必要があります。
※A事業所で居宅介護支援と訪問介護をやっている、A事業所とB事業所の2箇所で訪問介護をやっている等
ですが、管理・運営が一元化されており、事業所ごとに会計を分けていない等、やむを得ない場合は法人でまとめて報告しても差し支えないとされています。
介護のほかに障害福祉サービスをやっている場合も同様です。
事業所の財務状況などが公開されてしまうの?
この制度は集めた経営情報のデータを整理・分析した結果を公表することが目的です。
そのため介護経営DBで報告した情報は、事業所名が特定される形で公開されることはありませんのでご安心ください。
ただし必要に応じて、報告内容を確認するために国や自治体が事業所へ問い合わせをする可能性はあるかと思われます。
さいごに
今回のポイントをまとめると次のとおりです。
詳細や最新情報については、厚生労働省の公式サイトでもご確認いただけますと幸いです。