【就労継続支援A型】支援力向上のための取り組みとは?【基本報酬】

就労継続支援A型の基本報酬

就労継続支援A型事業所における基本報酬の単位数は、スコア方式で決まります。

これは、利用者の平均労働時間や生産活動の売上、

利用者が働く環境整備の取り組みなど5つの項目があり、

項目ごとに点数を付け、その合計点数により基本報酬が決まる方式です。

 

今回は、5つの項目のうち「支援力向上のための取り組み」について

事業者は何をすれば加点になるのか、また加点するための根拠として整えておくべき資料について解説します。

 

※スコア方式の全体的な内容を知りたい方は下記の記事をご覧ください。

【障害福祉】就労継続支援A型 基本報酬のスコア方式とは?

 

支援力向上のための取り組みとは?

就労継続支援A型サービスでは、利用者の支援にあたる職員(生活支援員や職業指導員など)の存在が非常に重要です。

その職員が意欲的に仕事に取り組むことができるようキャリアアップの機会などがあれば、

職員の支援スキルが磨かれ利用者への質の高い支援の提供につながります。

そのため、事業者が職員の支援力を向上させる取り組みを行っていると加点されます。

 

加点の対象となるものは次の①~⑧です。

 

①研修計画に基づいた外部研修会又は内部研修会

②研修、学会等又は学会誌等において発表

③視察・実習の実施又は受け入れ

④販路拡大の商談会等への参加

⑤職員の人事評価制度

⑥ピアサポーターの配置

⑦第三者評価

⑧国際標準化規格が定めた規格等の認証等

 

点数の考え方

 
まずは、先述の①~⑧から好きな項目を5つ選びます。
 
それぞれ取組状況や実績等によって評価点が1または2と決まっており、
 
選んだ5項目で評価点の合計がいくつになったかによって次のように加点されます。
なお、すべて前年度の実績によって点数が決まりますのでご注意ください。
 
 

それでは、事業者は具体的に何をすれば良いのでしょうか。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

※自治体により細かいルールが異なるため、判断に迷う場合は必ず各自治体へ

ご確認をお願いいたします。

 

①研修計画に基づいた外部研修会又は内部研修会

職員に障害者の就労の支援に関する知識や技能を習得させるための研修計画を作成し、

その計画に基づいて外部または内部研修に参加すると加点されます。

 

点数は研修に参加した人数に応じて変わります。

・職員1人以上半数未満の場合:1点

・職員の半数以上の場合:2点

 

※職員の数に含めて良いのは次の3職種のみです。管理者や事務員等は対象となりません。

 ・サービス管理責任者

 ・職業指導員

 ・生活支援員

 

注意点

① 必ず前年度に研修計画が作成されており、それに基づいて職員が研修を受けていなければなりません。

 

② 研修計画では次の3つを決めておくようにしましょう

  ・研修の実施時期(いつ実施するか)

  ・研修の目的(どんな能力を習得するかなど)

  ・研修の対象者(職種や経験年数など)

  ・具体的な内容

 

③ 研修と言っても、なんでも認められるわけではありません。

  外部研修、内部研修それぞれ以下に注意しましょう。

 

 【外部研修の場合】

  次のうち、いずれかが内容に含まれている研修が対象です。

 

 【内部研修の場合】

  内容が先述の外部研修と同等のものであり、外部から障害者雇用の専門家を講師として招いて

  実施される研修が対象です。

 

  また研修の時間もだいたい半日以上のものとされており、

  極端に短い時間で終わってしまう研修だと認められない可能性がありますのでご注意ください。

 

根拠資料

・研修計画書

・ 外部研修会の修了証書、受講証明書など

・ 外部研修会のカリキュラム(時間数、内容が分かるもの)

・外部研修会の受講概要、受講者名簿など

・ 内部研修会のカリキュラム(時間数、内容が分かるもの)議事次第、参加者名簿、資料など

 

②研修、学会等又は学会誌等において発表

事業所の職員が、外部で開催される障害者雇用に関する研修・学会等・学会誌等において発表すると加点されます。

点数は、発表した回数に応じて変わります。

・発表した回数が1回:1点

・発表した回数が2回以上:2点

 

注意点

・自治体や民間企業が開催する研修やセミナーに講演者等として登壇する形でも対象になります

 ただしあくまでも「外部の」研修等で発表することが要件なので、

 法人内部の研修等では認められません。

 

・セミナーや講義音対象者が一般市民や大学の生徒等に限定されている場合は、学会等としては認められません。

令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.2(令和3年4月8日)問21 参照)

 

根拠資料

・講演、実践報告を行った研修・セミナーの開催案内、実施概要、資料など

・研究報告を行った学会等での開催案内、実施概要、資料など

・ 学会誌等に掲載された事業所の取組を踏まえた研究論文、実践報告など

 

③視察・実習の実施又は受け入れ

障害者への就労支援について、先進的な取り組みを行っている他の就労継続支援A型事業所などの

視察・実習へ参加したり、他の就労継続支援A型事業所などからの視察・実習を受け入れると加点されます。

「視察・実習への参加」・「視察・実習の受け入れ」、どちらか片方を取り組んだ場合は+1点、

両方取り組んだ場合は+2点となっています。

 

【視察の具体例】

施設内や生産活動・支援プログラム等の見学、職員や利用者等との意見交換など

 

【実習の具体例】

支援プログラムへの参加、生産活動を実際に体験するなど

 

注意点

先進的な取り組みを行っている事業者は、次のような事業者が想定されています。

 

スコアの合計点が 170 点以上を達成している就労継続支援A型事業所等

・ 障害者雇用を進めるために新たな職務を創り出していたり障害者のキャリアップのため
の取組を行っており、法定雇用率を相当程度上回る障害者雇用率を達成している企業

もにす認定(※)を受けている中小企業

(※障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」)

 

根拠資料

・ 視察や実習の実施案内、視察・実習の実施スケジュール

・ 視察や実習の参加者名簿、資料など

・ 視察や実習の目的、視察先の選定理由、視察や実習の結果をまとめた概要資料

 

④販路拡大の商談会等への参加

生産活動の収入を上げるための手段として、販路拡大のために商談会などに参加すると加点されます。

点数は商談会などに参加した回数に応じて変わり、1回の場合は+1点、2回以上の場合は+2点となっています。

 

注意点

商談会等は、具体的に以下のようなものが想定されています。

 

・ 事業所が生産した商品等の販路開拓を行うために、ビジネスマッチングを目的とした展示会へ出展する

・ 事業所が生産した商品等の販路開拓を行うために、地元企業等への情報交換の機会を設定し、

 事業内容を説明したり、情報交換を行う

・ 新たな生産活動の導入や事業拡大を目的として、自治体や地域の商工会、商工会議所等が実施する企業間の情報交換、商談会へ参加する

 

なお、あくまでも通常の営業活動にプラスして、さらに販路を拡大するために商談会等に

参加している場合でなければ加点となりません。

 (令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.4(令和3年5月7日) 問20 参照)

 

根拠資料

・ 展示会の実施概要、パンフレット等

・ 地元企業等との情報交換を実施したことが分かる実施スケジュール、参加者名簿、資料など

・自治体や地域の商工会・商工会議所等が実施する企業間の情報交換、商談会の実施スケジュール、参加者名簿、資料など

 

⑤職員の人事評価制度

人事評価制度があり、それを職員に周知した上で運用されていると2点加点となります。

 

なお人事評価制度は、次の条件を満たすように作成する必要があります。

・人事評価制度の対象とする職員の業績、能力、行動等について、客観的な評価基準や昇給条件がある

評価の結果に基づいて職員の昇給を判定する仕組みになっている

 

注意点

人事評価制度は必ず明文化されている必要があります。

また職員に周知した上で実際に活用されていないと加点にはならないのでご注意ください。

 

根拠資料

・ 就業規則等

・人事評価制度を周知したことが分かる書類

・前年度中に人事評価制度に基づいて昇給・昇格を実施したことが分かる書類

 

⑥ピアサポーターの配置

事業所の職員として、ピアサポーターを雇用していると2点加点となります。

ピアサポーターは、障害者ピアサポート研修(基礎研修・専門研修)を受けている方であれば

なることができます。

 

なお、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員の中でピアサポート研修を受けた方を

ピアサポーターとしてOKです。

または、利用者とともに就労や生産活動に参加する立場の職員(利用者以外)でも加点の対象となります。

 

根拠資料

・ 障害者ピアサポート研修(基礎研修および専門研修)の修了書

・ ピアサポーターの労働契約書、勤務表など

・ ピアサポート研修を修了した後、ピアサポーターである職員が利用者に対して就労や生産活動の支援等を実施していることが分かる書類(職員体制図、勤務表等)

 

⑦第三者評価

直近3年以内に第三者評価機関から評価を受け、その結果を公表していると2点加点となります。

 

注意点

都道府県推進組織の認証を受けた第三者評価機関から評価を受ける必要があります。

またその結果は「福祉サービス第三者評価基準ガイドライン」に基づいて公表されていることも求められています。

 

根拠資料

・第三者評価の結果が分かる書類

・第三者評価の結果を公表していることが分かる書類

 

⑧国際標準化規格が定めた規格等の認証等

国際標準化機構が定めた規格等に適合しているという認定を受けていると2点加点となります。

国際標準化機構が定めた規格等とは、以下のようなものが想定されています。

 

◯ISOマネジメントシステム規格
・ ISO9001 品質
・ ISO14001 環境
・ ISO27001 情報セキュリティ
・ ISO22000 食品安全
・ ISO45001 労働安全衛生

◯JIS
・ JISQ15001 個人情報保護

◯JFS 食品安全マネジメントシステム
・ JFS-A
・ JFS-B
・ JFS-C

◯日本農林規格
・ JAS(一般JAS)
・ 有機JAS
・ ノウフクJAS

◯農業生産工程管理(GAP)
・ GLOBALG.A.P
・ ASIAGAP
・ JGAP

 

根拠資料

・認証書など、各種規格等に適合し認証されていることが分かる書類

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。

本記事を参考に、取り組みやすいものから実施していただけますと幸いです。

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