【令和6年報酬改定】処遇改善加算はどう変わる?【障害福祉】

はじめに

令和6年度(2024年度)の障害福祉サービス等報酬改定にて、

処遇改善加算の大幅な制度変更が検討されています。

現段階で厚労省の検討チームが発表している資料をもとに、

どのように変わるのか、またいつから変わるのかを解説します。

 

処遇改善加算の現状

現行の処遇改善に関する加算は次の3つに分かれています。

 

① 福祉・介護職員処遇改善加算 

② 福祉・介護職員等特定処遇改善加算

③ 福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算

 

それぞれ下記のイメージ図のように要件が異なり、非常に複雑です。

計画書や実績報告書などの事務作業の負担が大きいこともあり

取得が難しいと感じていたり、あまり細かい部分は分からないまま

取得している事業者様も少なくないのではないでしょうか。

 

第43回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料(令和5年12月6日開催)

「資料1 障害福祉分野の処遇改善について」より引用

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001172445.pdf

 

 

実際に、「事務作業の煩雑さ」、「制度の複雑さ」、「職種間の賃金バランス」等を理由に

取得していない事業所が一定数おり

処遇改善に関する加算の取得率は事業所全体の7~8割程度、

特定処遇改善加算にいたっては6割程度です。(令和5年4月時点)

 

このような背景から、処遇改善加算を一本化することにより

より取得しやすい加算になるよう検討が進められています。

では一本化といっても、どのように制度が変わるのでしょうか。

 

具体的な変更内容

現行の3つの加算をまとめて1つの加算にするにあたり、

大きく次の4点が検討されています。

 

① 職種間の賃金配分ルールを統一

② ベースアップ等要件の見直し

③ 職場環境等要件に基づく取組の見直し

④ これまで処遇改善加算等の対象ではなかったサービス(職種)を対象にする

 

① 職種間の賃金配分ルールを統一

 

 具体的には以下のように統一することが検討されているようです。

 

 福祉・介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に

 配分することとするが、事務所内で柔軟な配分を認める

 

 これまでも職種間の賃金配分ルールはある程度事業所に委ねられていましたが、

 例えば特定処遇改善加算では、職員の経験やスキル・職種によってグループ分けをした上で

 グループごとの配分比率のルールがありました。

 

 一方で処遇改善加算ではそういったルールはなく、配分の対象者が福祉・介護職員に限定されることのみです。

 このようにバラバラだった要件が統一され、より柔軟に配分することができるようになるようです。

 つまり現行のベースアップ等加算のように、福祉・介護職員だけでなく事務員や調理スタッフなど、その他の職種にも配分することができ、その金額もある程度自由に決められるということになります。

 

② ベースアップ等要件の見直し

 

 現状、ベースアップ等要件はベースアップ等加算を取る場合にのみ満たす必要があります。

 具体的には、受け取った加算額の2/3以上を福祉・介護職員等のベースアップに使用することが

 要件です。

 一本化された新加算でもこのベースアップ等要件は継続されるようですが、

 全体の何割以上をベースアップに使用するかどうかは見直しが検討されています。

 また具体的な割合等の要件が分かり次第追記します。

 

③ 職場環境等要件に基づく取組の見直し

 

 職場環境等要件とは、職員のキャリアアップのための研修体制を作ったり、

 生産性を上げるための取り組みを行うことです。

 

 現在は下記の中で処遇改善加算の場合は1つ以上、

 特定処遇改善加算では6つの区分のうち3つの区分を選び、区分ごとに1つ以上取り組んでいることが必要です。

 

 今回の一本化のタイミングで、取り組むべき項目等を増やすなど

 より実効性のあるものとするような見直しが行われるようです。

 第43回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料(令和5年12月6日開催)

 「資料1 障害福祉分野の処遇改善について」より引用

 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001172445.pdf

 

④ これまで処遇改善加算等の対象ではなかったサービス(職種)を対象にする

 

 現在処遇改善加算等の対象となっているサービスに従事する職種と

 同じ業務を担当しているという理由から、次の3職種も対象にすることが検討されています。

 実際に追加されれば、対象のサービスを行っている事業所は新たに処遇改善加算を取れるようになります。

 

 ・就労定着支援の就労定着支援員

 ・自立生活援助の地域生活支援員

 ・就労選択支援の就労選択支援員

 

 ちなみに現状対象となっているサービス、職種は下記です。

《対象サービス》

 居宅介護/重度訪問介護/同行援護/行動援護/重度障害者等包括支援/生活介護/施設入所支援/短期入所/療養介護
 自立訓練(機能訓練、生活訓練)/就労移行支援/就労継続支援A型/就労継続支援B型/共同生活援助
 児童発達支援/医療型児童発達支援/放課後等デイサービス/居宅訪問型児童発達支援/保育所等訪問支援
 障害児入所施設(福祉型、医療型)

《対象職種》

 ホームヘルパー/生活支援員/児童指導員/保育士/世話人/職業指導員/地域移行支援員/就労支援員/訪問支援員 など

 

以上です。

これらの要件などの変更にあわせて、毎年4月に提出している

処遇改善計画書や、毎年7月ごろに提出している実績報告書の様式が変更(簡素化)されることとなります。

 

変更はいつから?

通常、報酬改定は年度初めの4月から適用されますが

今回の処遇改善加算の一本化については

令和6年6月から適用の方向で検討が進められているようです。

(その他の加算については令和6年4月から)

ただ、1年間の経過措置があり

経過措置が終わるまでは賃金の配分などを変えなくても良いようです。

 

これに伴い書類の提出期限などもイレギュラーになることが予想されます。

厚労省や自治体のホームページ等をこまめにチェックしましょう。

本記事にも随時、最新情報を追記していきたいと思います。

 

変更されたら何をする?

 

新処遇改善加算の詳細が発表されたら、

事業者は主に以下の対応が必要です。

 

・新処遇改善加算の計画書作成

・新処遇改善加算の計画書の提出

・配分対象の職員の見直し

 (必要に応じて)

・就業規則等の見直し、改定

 (必要に応じて)

・雇用契約書の見直し

 (必要に応じて)

 

今やっておくべきことは?

 

スムーズに新処遇改善加算に移行できるよう、

できれば今のうちに以下のことをやっておくといいでしょう。

 

・従業員の保有資格や経験年数、職種の整理

・毎月の処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等加算の金額の確認

 (「障害福祉サービス費等処遇改善加算等総額のお知らせ」等で確認できます。)

・現状、処遇改善加算等を使用している手当などの金額の確認

 

さいごに

 

いかがでしたでしょうか。

「結局、今受け取っている毎月の処遇改善加算は増えるのか?」

「事務作業の負担は本当に減るのか?」等

今回の変更による事業者への影響はまだ分からない部分が多いです。

ですが、処遇改善加算は従業員の賃金に直接関わるものなので

最新の動向に注意しましょう。

 

 

【参考】

第44回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」(令和5年12月6日開催)

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について(案)

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001175638.pdf

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