はじめに
令和6年6月から、処遇改善加算の制度が大きく変わり「新しい処遇改善加算※」がスタートします。
※本記事では「新処遇改善加算」と表記します。
この新処遇改善加算について要件や手続きのスケジュールの追加情報が発表されましたので、最新情報をまとめました。
(令和6年3月21日現在の情報です)
新処遇改善加算の概要
今までの処遇改善加算の制度は「処遇改善加算」・「特定処遇改善加算」・「ベースアップ加算」の3つがありました。
これが令和6年6月から一本化、つまり一つの加算にまとめられます。
現行の処遇改善加算はルールが複雑で、頭を悩ませていた事業者様も多いかもしれません。
今回の変更でバラバラだった3つの加算が合体してより分かりやすくなるようですが、
具体的な要件や手続き方法はどうなるのでしょうか。
以下で詳しく解説したいと思います。
ポイントは4つ!
新処遇改善加算で抑えておきたいポイントは大きく次の4つです。
① 6月から新処遇改善加算がスタートする
② 賃金の配分ルールが緩和される
③ 激変緩和措置として新制度への移行に猶予が設けられている
④ 加算を取得するための要件は3つ
⑤ 計画書の様式も変わる
それぞれ確認しましょう。
(1) 6月から新処遇改善加算がスタートする
新処遇改善加算が取得できるようになるのは「6月のサービス提供分」からです。
つまり、今すでに処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等加算を取っている事業所は、
4月・5月に関してはまだ今の加算を取るということになります。
これに伴い、自治体への計画書や加算の体制届を提出するスケジュールがイレギュラーになっていますのでご注意ください。
以下は厚労省が発表している提出スケジュールですが、必ず書類提出先の自治体のホームページをご確認の上お手続きをお願いします。
(厚労省資料:事業者向けリーフレットより抜粋)
(2) 賃金の配分ルールが緩和される
今までの処遇改善加算は、配分できる職種が介護職員に限定されていたり
特定処遇改善加算では職種間の配分比率が決まっているなどの制限がありました。
これが今回の変更で緩和され、基本は介護職員へ配分、特に経験・技能のある職員に重点的に配分する必要がありますが
事業所内で柔軟な配分が認められるようになります。
つまり、できるだけ経験・技能のある介護職員に多く手当等を支給しつつ、事務員や調理スタッフなどの介護職員以外にも配分はOKということです。
事業者によっては実態に合わせて配分の見直しができる機会になり得るかと思います。
(3) 激変緩和措置として新制度への移行に猶予が設けられている
今回はかなり大きな制度変更となるため、事業者によっては新しい要件に合わせていくための
給与支給ルールや就業規則などの大幅な変更が必要になる場合があります。
そのため国としても、一定の猶予期間を設けるのでその期間に整えてくださいね、というのが激変緩和措置です。
この猶予期間中は新処遇改善加算の要件を満たせていなくとも、現行の処遇改善加算等の要件を満たせていたり、所定の要件を満たせば
新処遇改善加算を取ることが出来ます。
どのように猶予されているかについては要件ごとに違うため、後述の要件ごとに記載した赤字をご確認ください。
(4) 加算を取得するための要件は3つ
新処遇改善加算は(Ⅰ)~(Ⅳ)までの4段階になります。
そのため、要件は基本的に今までの処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等加算を踏襲する形ですが、
どの程度要件を満たすかによって(Ⅰ)~(Ⅳ)のうちどれを取得できるかが変わるようになっています。
具体的な要件は次の3つです。
① キャリアパス要件
② 月額賃金改善要件
③ 職場環境等要件
それぞれ細かい区分やルールがあるので確認しましょう。
① キャリアパス要件
キャリアパス要件は(Ⅰ)~(Ⅴ)までの5つあります。
・キャリアパス要件(Ⅰ)
→介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を決め、それらに応じた賃金体系を整備する。
〈猶予〉R6年度中は年度内に対応するという誓約でもOK
・キャリアパス要件(Ⅱ)
→介護職員の資質向上の目標や、以下のどちらかに関する具体的な計画を策定して研修の実施や研修の機会を確保する。
a: 研修機会の提供又は技術指導等の実施、福祉・介護職員の能力評価
b: 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)
〈猶予〉R6年度中は年度内に対応するという誓約でもOK
・キャリアパス要件(Ⅲ)
→介護職について、次のうちどれかの仕組みを整備する。
a: 経験に応じて昇給する仕組み
b: 資格等に応じて昇給する仕組み
c: 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
〈猶予〉R6年度中は年度内に対応するという誓約でもOK
・キャリアパス要件(Ⅳ)
→経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。
※ただし、加算の額が少ない小規模事業所などは年額440万円以上でなくてもOKです
〈猶予〉R6年度中は月額8万円の改善でもOK
・キャリアパス要件(Ⅴ)
→福祉専門職員配置等加算等の届出を行っていること。
〈猶予〉特になし
以上です。
また、満たすべき要件はそれぞれ以下のようになっています。
新処遇改善加算(Ⅰ) → キャリアパス要件(Ⅰ)~(Ⅴ)すべて
新処遇改善加算(Ⅱ) → キャリアパス要件(Ⅰ)~(Ⅳ)(=(Ⅴ)以外すべて)
新処遇改善加算(Ⅲ) → キャリアパス要件(Ⅰ)~(Ⅲ)
新処遇改善加算(Ⅳ) → キャリアパス要件(Ⅰ)・(Ⅱ)のみ
② 月額賃金改善要件
月額賃金改善要件は次の2つです。
なお、新処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅳ)すべてで満たす必要があります。
・月額賃金改善要件(1)
→新処遇改善加算(Ⅳ)相当の加算額の半分以上をベースアップ(基本給や毎月決まって支払われる手当の増額など)に使用する。
※新処遇改善加算(Ⅳ)相当なので、もし新処遇改善加算(Ⅰ)をとるとしても、金額は新処遇改善加算(Ⅳ)を取った場合にもらえる加算額を基準に計算します
〈猶予〉R6年度中は満たせていなくてOK
・月額賃金改善要件(Ⅱ)※ベースアップ等加算を現在とっていない場合のみ
→前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たなベースアップに使用する。
③ 職場環境等要件
職場環境等要件は、これまで通り下記項目から取り組みを選ぶ形ですが、(Ⅰ)~(Ⅳ)のどれを取るかによって必要な取り組みの数などが違います。
新処遇改善加算(Ⅰ)・(Ⅱ) → 6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。
かつ、情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する
〈猶予〉R6年度中は6つの区分から3つを選択し、それぞれで1以上取り組む。取組の具体的な内容の公表はしなくてOK(=現行の特定処遇改善加算と同じ)
新処遇改善加算(Ⅲ)・(Ⅳ) → 6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。
〈猶予〉R6年度中は全体で1以上(=現行の処遇改善加算と同じ)
(厚労省資料:事務担当者向け・詳細説明資料より抜粋)
(5) 計画書の様式が変わる
自治体へ提出する計画書の様式も大きく変更されています。
下記の厚労省のページに掲載されているのでよろしければご参考ください。
ただし、実際に計画書を提出する際は必ず提出先の自治体ホームページからダウンロード等をしたものをお使いくださいね。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
今回の解説が新処遇改善加算への移行手続きの一助となれば幸いです。