施設外就労のルールや注意点を分かりやすく解説【就労継続支援A型】

施設外就労とは?

就労継続支援A型事業における施設外就労とは、事業所が外部から請け負った作業をその外部企業内で行うことです、

つまり、利用者が事業所以外の法人の事務所等で就労を行うことができるということです。

 

ただ原則、利用者は指定を受けた事業所で就労を行うことになっているため

施設外就労を行うためには一定の要件を満たす必要があります。

 

では具体的にどのような要件があるのでしょうか。

以下で詳しく解説していきます。

 

※本記事は就労継続支援A型事業者向けに解説しています。

他の就労系サービス(就労移行支援・就労継続支援B型)とは基準が異なる部分がありますので御注意ください。

 

大きな要件は4つ!

施設外就労は細かいルールが多くありますが、大きく分けると次の5つに分類されます。

 

(1) 利用者の数

(2) 職員の数

(3) 作業の請負契約

(4) 運営

(5) 書類

 

それぞれ内容を確認しましょう。

 

(1)利用者の数

 施設外就労に行く利用者の数(日ごと)は、事業所の定員数を超えてはなりません

 例:定員10人の事業所の場合、1日に施設外就労に行ける利用者は20人までです。

 

 逆に言えば、事業所で就労する利用者数+施設外就労に行く利用者数が定員数を

 超えていたとしても問題は無いということです。

 

 事業所としては実質的に利用定員の最大2倍まで利用者を受け入れることが可能なので

 これらは施設外就労のメリットでもありますね。

 

(2)職員の数

 施設外就労先には必ず事業所の職員が同行する必要があります。

 そのため人員基準があるのですが、施設外就労の利用者と事業所内の利用者で

 それぞれ分けて配置を考えなければなりません。

 

 ① 施設外就労の配置

    その日に施設外就労を行う利用者数に対して、常勤換算で7.5:1または10:1の職員を配置

 

    例:7.5:1で基本報酬を算定している事業所で、その日に施設外就労に行く利用者が9人の場合

      9÷7.5=1.2  → 2人以上の生活支援員や職業指導員が同行する

 

 ② 事業所の配置

    原則、前年度の平均利用者数(施設外就労の利用者は除く)に対して、常勤換算で7.5:1または10:1の職員を配置

    ただし、事業所の配置に関しては自治体によってルールが異なることがあるので

    必ず役所へ確認をお願いします。

 

   【注意点】

    管理者やサービス提供責任者、目標工賃達成指導員(専従の場合)は施設外就労の常勤換算に含められません

    事業所に残る必要があります。

 

(3)作業の請負契約

 事業所は、施設外就労先の企業と作業の請負契約を結ぶことが必要です。

 

 また、請負契約を結ぶ際には以下にも留意しましょう。

 

  ・作業の完成についての財政上、法律上のすべての責任は事業所を運営する法人が負うことを契約書へ明記する

 

  ・施設外就労先から事業所を運営する法人に支払われる報酬は、完成された作業の内容に応じた金額とする

    ※時給制などでの契約になっていると、請負契約ではないと判断される可能性があります。

 

  ・施設外就労先の企業から作業に必要な機械や設備等を借りる場合には、賃貸借契約または使用賃借契約を結ぶ

 

  ・施設外就労先の企業から作業に必要な材料等の供給を受ける場合は、代金の支払い等の必要な事項について明確にしておく

 

  【注意点】

   代表者が同じ別法人同士では請負契約を結ぶことはできないため、

   事業所を運営する法人と施設外就労就労先の法人の代表者が同じ場合、施設外就労は認められません。

   また同一法人内の別事業所と請負契約を結ぶことができないため同様です。

 

(4)運営

施設外就労を行うにあたっては、次の4点をすべて満たす必要があります。

 

  ① 緊急時の対応ができる体制があること

 

  ② 請け負った作業についての指導は、施設外就労先の職員ではなく、

    必ず事業所の職員が直接行うこと

 

  ③ 事業所が請け負った作業を、利用者と施設外就労先の企業の従業員が

    共同で処理しないこと

  ④ 施設外就労が就労能力や工賃(賃金)のアップと、一般就労への移行に貢献すると認められること

    ※あくまでも、施設外就労を行うことで利用者の能力・賃金が上がったり、

     一般就労へつなげるためのステップとして施設外就労を行うことが求められています。

     客観的に見て事業所の利益拡大が最優先と捉えられるような状況は望ましくありません。

 

  ⑤ 利用者に同行する職員は、以下の業務を行うこと

    ・利用者の作業程度、意向、能力等の状況把握

    ・作業の実施に向けての調整(スケジュール等)

    ・作業の指導など、必要な支援

    ・施設外就労先の企業との連携

    ・利用者の家族との連携

 

(5)書類

施設外就労を行うにあたっては、次の4点の書類をすべて作成する必要があります。

 

① 運営規程において、提供するサービスの中に施設外就労を明記していること

② あらかじめ利用者の個別支援計画に施設外就労の内容や目標等を記載していること

  ※利用者の適性や施設外就労を行った場合に得られる効果、個別の目標を話し合った上で

   内容・目標を決めましょう。実地指導でもよく指摘される傾向があります。

③ 施設外就労について、達成度を評価して記録を残すこと

④ 施設外就労の実績報告書を毎月作成すること

  ※実績報告書はこれまで毎月自治体へ提出が必須でしたが、

   令和6年度からは提出までしなくて良いことになりました。

   ただし作成しなくて良いわけではないので、実地指導の際などに確認されることもあるため

   忘れずにご作成し保存してください。

(参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

 

さいごに

施設外就労で重要なポイントをまとめると以下のとおりです。

 

・定員を超えない範囲で利用者を受け入れ、適切な数の職員を配置する

・必ず施設外就労先と請負契約を結び、指導は事業所の職員が行う

・運営規程や個別支援計画、実績報告書など適切に書類を作成、保存する

 

ぜひ貴事業所でもチャレンジを検討されてみてください。

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