【令和6年度改定】共同生活援助の基本報酬はどう変わる?【障害福祉】

共同生活援助の報酬改定は大きく4つ!

共同生活援助(いわゆる障害者のグループホーム)での令和6年度の報酬改定は次の4つが予定されています。

 

① 重度障害者支援加算の評価の拡充・新設

② 基本報酬区分の見直し等

③  日中支援加算の見直し

④ 個人単位での居宅介護等利用の特例的取扱い延長

 

このうち本記事では、「②基本報酬区分の見直し等」について解説します。

 

変更の概要は?

令和6年度は多くの障害福祉サービスで多くの報酬改定が予定されていますが、

共同生活援助においては事業所の収入の核とも言える基本報酬が変わるということで、特に注目されている変更ではないでしょうか。

 

では、具体的にどのように変更されるのでしょうか?

簡単にまとめると次のとおりです。

 

【基本報酬】

現在:世話人の配置数によって区分があり(4:1、6:1など)、区分ごとに単位数が決まっている

改定後:世話人の配置区分は1つにまとめられ、余分に配置された分は新しい加算で評価される

 

現在の基本報酬のおさらい

 

それではまず、現在の基本報酬から確認しましょう。

(とにかく改定後どうなるのか知りたい!という方は飛ばしてください)

現在は共同生活援助の類型ごとに、世話人の配置によって区分が分けられています。

 

〈介護包括型の場合〉

① 4:1(利用者4人につき世話人を1人配置)

② 5:1(利用者5人につき世話人を1人配置)

③ 6:1(利用者6人につき世話人を1人配置)

 

〈日中サービス支援型の場合〉

① 3:1(利用者3人につき世話人を1人配置)

② 4:1(利用者4人につき世話人を1人配置)

③ 5:1(利用者5人につき世話人を1人配置)

 

〈外部サービス利用型の場合〉

① 4:1(利用者4人につき世話人を1人配置)

② 5:1(利用者5人につき世話人を1人配置)

③ 6:1(利用者6人につき世話人を1人配置)

④ 10:1(利用者10人につき世話人を1人配置)

 

例えば、必要な世話人の数は次のように計算します。

・介護包括型の共同生活援助

・利用者:15人(前年度の平均)

・事業所の所定労働時間:週40時間(月160時間)

・4:1で報酬を算定したい

 

7人 ÷ 4 = 1.7人の世話人が必要(小数点以下第二位は切り捨て※以下同様)

この1.7人を常勤換算で満たすように配置しなければなりません。

1.7人というと分かりにくいので、必要な労働時間数を考えます。

 

1.7人 × 40時間  = 68時間 →世話人の合計労働時間が週68時間あればOK

(月で考えると1.7人 × 160時間 = 272時間)

 

以上をふまえると、例えば世話人として週40時間働くAさん、週28時間働くBさんがいれば良いということです。

 

改定後の基本報酬

先述のとおり、改定後は「区分」がなくなり、1つにまとめられます。

※外部サービス利用型は2つ

 

〈介護包括型の場合〉

 6:1(利用者6人につき世話人を1人配置)

〈日中サービス支援型の場合〉

 5:1(利用者3人につき世話人を1人配置)

〈外部サービス利用型の場合〉

① 5:1(利用者5人につき世話人を1人配置)

② 10:1(利用者10人につき世話人を1人配置)

 

先ほどの例で考えると次のように計算することが出来ます。

7人 ÷ 6 = 1.1人の世話人が必要(常勤換算)

必要な労働時間で考えてみましょう。

 

1.1人 × 40時間  = 44時間 →世話人の合計労働時間が週56時間あればOK

(月で考えると1.1人 × 160時間 = 176時間)

 

以上をふまえると、例えば世話人として週40時間働くAさん、週4時間働くBさんがいれば良いということです。

 

つまり、4:1で配置していたときの世話人の労働時間が週12時間分浮くことになります。

そしてこの例の場合、4:1で配置していたときの単位数から新たな6:1の単位数になるので、基本報酬の単位数が減ってしまいます。

例えば利用者の障害支援区分が4の場合は次のようになります。

現在:471単位(4:1) → 改定後:372単位

 

このままでは大幅な減収になってしまうので、

余分に配置している人員を評価する加算として「人員配置体制加算」が新たに作られました。

 

人員配置体制加算の要件

人員配置体制加算は(Ⅰ)・(Ⅱ)と2つあり、ポイントは次の2つです。

 

(1)人員基準上必要な世話人・生活支援員にプラスαで世話人または生活支援員を配置する

(2)必要な配置数は「特定従業者数換算方法」で計算する

 

それぞれ詳しく説明します。

 

(1)人員基準上必要な世話人・生活支援員に加えて、プラスαで世話人または生活支援員を配置する

 

 事業所が配置しなければならない最低の基準よりも多く職員を配置するということですね。

 ここで配置する職員は世話人でも生活支援員でもどちらでもOKです。

 

 また下記のように、サービスごとに余分に必要な人数が異なります。

 

〈介護包括型の場合〉

 ・人員配置体制加算(Ⅰ)→12:1(利用者12人につき世話人か生活支援員を1人配置)

 ・人員配置体制加算(Ⅱ)→30:1(利用者30人につき世話人か生活支援員を1人配置)

〈日中サービス支援型の場合〉

 ・人員配置体制加算(Ⅰ)→7.5:1(利用者12人につき世話人か生活支援員を1人配置)

 ・人員配置体制加算(Ⅱ)→20:1(利用者30人につき世話人か生活支援員を1人配置)

〈外部サービス利用型の場合〉

 ・人員配置体制加算(Ⅰ)→12:1(利用者12人につき世話人か生活支援員を1人配置)

 ・人員配置体制加算(Ⅱ)→30:1(利用者30人につき世話人か生活支援員を1人配置)

 

(2)必要な配置数は「特定従業者数換算方法」で計算する

 

特定従業者数換算方法」とは、【常勤・非常勤の総労働時間】÷【40時間】で計算する方法です。

常勤換算と違い、事業所の所定労働時間に関係なく必ず40時間で割ります。

先ほどの例で考えてみましょう。

 

・介護包括型の共同生活援助

・生活支援員の基準上の必要数は1人

・利用者:15人(前年度の平均)

・事業所の所定労働時間:週40時間(月160時間)

・新しい報酬+人員配置体制加算(Ⅰ)を取りたい

 

まずは基本報酬を考えます。

7人 ÷ 6 = 1.7人の世話人が必要(常勤換算)

必要な労働時間数は次のとおりです。

1.7人 × 40時間  = 68時間 →世話人の合計労働時間が週68時間あればOK

(月で考えると1.7人 × 160時間 = 272時間)

 

次に人員配置体制加算を考えます。

7人 ÷ 12 = 0.5人の世話人が必要(特定従業者数換算)

必要な労働時間数は次のとおりです。

0.5人 × 40時間  = 20時間 →世話人・生活支援員の合計労働時間が週20時間あればOK

(月で考えると0.5人 × 160時間 = 80時間)

 

以上をふまえると、例えば次のような配置であればOKです。

 

世話人:週40時間働くAさん、週28時間働くBさん、週20時間働くCさん

生活支援員:週40時間働くDさん

この場合、Cさんが余分に配置されているということです。

 

【注意】

注意したいのは、所定労働時間が32時間の事業所の場合です。

この場合、基本報酬は常勤換算の場合は32時間で割りますが

特定従業者数換算方法の場合は32時間ではなく40時間で割らなければなりません。

 

結局、報酬はどうなる?

さて、では実際に報酬はこれまでどおりかそれ以上になるのでしょうか。

先ほどの例で比較してみましょう。

※利用者の障害支援区分が4の場合の単位数で考えます

 

【現在】

 基本報酬(4:1):471単位/日 

【改定後】

 基本報酬:372単位/日 人員配置体制加算(Ⅰ):83単位/日 →455単位/日 

 

このように、4:1の区分だった事業所はこれまでの水準には満たない場合が多そうです。

(障害支援区分によってはプラスになる場合もあり)

人員を多く配置していた事業所ほど、収支に大きな影響が出るかもしれません。

※報酬改定後の単位数の詳細は下記をご覧ください

障害福祉サービス費等の報酬算定構造

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。

共同生活援助(障害者グループホーム)での令和6年度報酬改定で重要なポイントは次のとおりです。

 

・基本報酬の区分がなくなり、1つになる(外部サービス利用型は2つ)

・最低基準よりも多く職員配置すると人員配置体制加算によって評価される

・人員配置体制加算を取るために必要な人員数は「特定従業者数換算方法」で計算する

・「特定従業者数換算方法」は常勤換算とちがい、所定労働時間に関わらず40時間で割る

 

ご参考になれば幸いです。

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