労働基準法には管理監督者の定めがあります。
管理監督者には労働時間、休憩、休日の規定が適用されません。権限や待遇的にも役員と変わらない働き方だと同一視されているがゆえなのですが、法の趣旨を理解せずに恣意的な運用も行われがちというのか実状でしょう。
そんな管理監督者ですが、22時から朝の5時まで就業した場合には深夜割増手当を支払わなければなりません。
条文だけだと、深夜時間が適用されるということは読み取りにくいと個人的にはおもっています。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
実際に弊社とお付き合いされている共同生活援助のお客様から管理者だから残業代も深夜割増料金を支払わなくて問題ないのでは?と質問をいただきます。
そこでこの記事では管理監督者にはなぜ深夜割増手当が発生するのか、その理由につきまとめました。
深夜割増手当は労働時間の長さに着目していない
管理監督者が適用除外される時間外労働の割増手当は労働時間が関係します。1日8時間以上、週に40時間以上働いたら、延長した分の残業代が発生するということです。
しかし深夜割増手当はその1日の労働した時間の長さは関係ありません。
時間帯に対する手当です。
夜の22時入りで朝の5時まで働くのであれば、最初の1時間から深夜割増手当が支給されますよね。
そう考えると時間外労働の割増賃金と深夜の割増賃金は趣旨が異なるものといえます。
実際に残業時間関係なく、深夜業務という括りで適用される規定を確認しましょう。
例えば労働安全衛生法の健康診断も深夜勤務の方は半年に一回以上健診を受診させないといけません。
他にも年少者は深夜業に関して規制を受けます。年少者は61条の深夜業務に関して制限を受けるという関係性です。以上のことから管理監督者が適用除外される労働時間などを定めた37条と深夜勤務は異なる規定で存在します。
このように時間外労働と深夜帯の勤務の適用が別の規定として存在していることが他の条文から読み取れれますね。
よって結論としては管理監督者には、深夜割増手当は支払わなければならない、で間違いありません。
事務的な矛盾はある
結論に相違はないのですが、管理監督者には深夜割増手当を支払わなくていいと思わせるような規定は存在しています。
例えば労働基準法施行規則の54条5項です。
賃金台帳の規定ですが、管理監督者に該当する者は深夜労働時間を記入することを求めていません。深夜割増手当を支払うのであれば、深夜の時間帯を管理しないと支払えませんよね。
深夜勤務の時間数は記録に残さなくていいけど、割増手当は支払いなさいというのが結論になります。矛盾を感じさせる部分ではありますよね。
賃金制度に注意する
以上踏まえ、管理監督者に対しては深夜割増手当を支払う義務があることは間違いありません。
裁判でも結論づいています。
会社側としては深夜帯に働く管理監督者が、いれば手当の内訳を雇用契約書や賃金規程に明記しておくことが、とても重要です。
その手当の中に◯時間相当分の深夜割増手当が含むとあれば、仮に労働者とトラブルになっても深夜割増の手当を支払っている根拠の1つとして言えますが、なにも記載がないのであれば遡って手当を支払えと言われるリスクはあります。
また、そのトラブルになった従業員はそもそも労働基準法で定める管理監督者に該当するのか?というのは、別の問題としてあります。
プロジェクトリーダーを管理監督者として取扱っていた会社は労働基準法で定める管理監督者であることが否定されて、深夜だけではなく過去の未払い残業代金も支払うことを命じられました。
管理監督者の運用にはご注意下さい。
まとめ
管理監督者に深夜割増手当を支払う理由につきまとめました。実は社労士の私も、条文だけだと読み取れないよなーなんてところから調べたのがこの記事を書いたきっかけです。
実務的には結論だけ覚えておけばいい部分もあるのですが、腑に落ちない方向けにお役立て出来ればと思いまとめました。
くれぐれも管理監督者は役員と同等って考え方は忘れずに運用していただければと思います。
お疲れ様でした。