はじめに
共同生活援助(障害者グループホーム)が取れる加算の中に利用者の⼀⼈暮らしの実現へ向けた⽀援を評価する「自立生活支援加算」があります。
令和6年度の報酬改定では、支援をさらに充実させるため、新たに自立生活支援加算(Ⅰ)・(Ⅲ)の区分が追加されました。
これまでの自立生活支援加算も「自立生活支援加算(Ⅱ)」として残っていますが
日中サービス支援型の共同生活援助でしか算定ができなくなっています。
では、この加算は具体的に何をすれば取れるのでしょうか。
以下では自立生活支援加算を取るための要件を解説していきます。
※自治体により解釈が異なる場合があります。必ず加算の申請前にはご確認をお願いいたします。
自立生活支援加算(Ⅰ)
単位数 :1,000単位/月
対象サービス:介護サービス包括型・外部サービス利⽤型 のみ
次の要件①・②をどちらも満たすと加算を取ることができます。
ただし、「計画の見直しを行った日の属する月から起算して6ヶ月以内に限り、月に1回を限度として算定できる」という条件付きなのでご注意ください。
要件①
利用者本人が、居宅等での一人暮らしを希望し、かつ、一人暮らしができる見込みがあること
要件②
利用者の退居に向けて、個別支援計画を見直した上で一人暮らしに向けた支援を行うこと
なお、一人暮らしに向けた支援の回数や内容については決められていませんが
必ず個別支援計画に位置づけた上で支援し、適切に支援記録を残す必要があります。
さらに以下を満たすことで、単位数を追加して取ることができます。
・ 居住支援法人または居住支援協議会に対して、月に1回以上、利用者の住宅の確保や居住の支援に必要な情報を共有した場合:+35単位/月
・ 居住支援法人と協力して、利用者に対して在宅での療養上必要な説明と指導を行う。
その上で(自立支援)協議会や保健・医療・福祉等の関係者による協議の場に対して、住宅の確保や居住支援に関する課題を報告した場合:+500単位/月
※居住支援法人とは?
住宅確保要配慮者(高齢者、障害者、低所得者、外国人など)に対して、安定した住まいの確保を支援するために設立された法人です。
住宅の提供や住まい探しのサポート、生活支援などを行い、住まいに困難を抱える人々が安心して暮らせるように支援しています。
※居住支援協議会とは?
住宅確保要配慮者(高齢者、障害者、低所得者、外国人など)が安定した住まいを確保できるよう、地域の関係機関や団体が連携して設立する協議会です。
行政、福祉団体、不動産業者、NPOなど様々な主体が協力し合い、住宅支援に関する情報共有や支援体制の整備を行っています。
自立生活支援加算(Ⅱ)
単位数 :500単位/月
対象サービス:⽇中サービス⽀援型 のみ
次の要件①・②をどちらも満たすと加算を取ることができます。
ただし、「利用者の入居中に2回を限度として算定できる」という条件付きなのでご注意ください。
要件①
一人暮らしができる見込みがある利用者の退去に先立って、退去後の生活について相談援助を行うこと
※ただし、共同生活援助の利用期間が1ヶ月を超えると見込まれている方に限られるため、体験利用の方などは対象外になります。
要件②
利用者が退去後に暮らす居宅を訪問して、利用者・家族等に対して退去後の障害福祉サービスやその他の保健医療サービス等についての相談援助や連絡調整を行うこと
また、利用者の退去後30日以内に居宅を訪問して、利用者・家族等に対して相談援助を行った場合にも取ることができます。
ただしこちらも「退去後1回を限度として算定できる」という条件付きです。
※退去後に他の社会福祉施設に入所する場合は加算を取ることができません。
自立生活支援加算(Ⅲ)
単位数:40〜80単位/⽇
対象サービス:介護サービス包括型・外部サービス利⽤型 のみ
要件①
利用者本人が、居宅等での一人暮らしを希望し、かつ、一人暮らしができる見込みがあること。
要件②
移行支援住居を1つ以上保有していること。
※移行支援住居とは、下記をすべて満たす住居です。
・退居後に一人暮らし等へ移行することを目的として、
一人暮らし等を希望する利用者へ一定期間支援を行うものであること
・定員が2名以上7名以下であること
・人員基準上配置が必要なサービス管理責任者とは別で
社会福祉士または精神保健福祉士の有資格者であり、
移行支援住居に専従するサービス管理責任者を7:1以上配置する
(本体事業所・別事業所のサービス管理責任者以外の職種と
兼務することは可能)
要件③
移行支援住居への入居を希望する利用者の入居にあたって、
会議を開催した上で、利用者の意向を反映した個別支援計画を作成する。
※入居する前に個別支援計画の作成が必要ですのでご注意ください
要件④
移行支援住居の入居者に対して、以下の支援を行うこと
・住居の確保や退居後の一人暮らし等に移行するための活動に関する相談
・外出の際の同行
・障害福祉サービス事業者や、医療機関等との連絡調整
など
要件⑤
居住支援法人または居住支援協議会に対して、利用者の住宅の確保や居住の支援に必要な情報を定期的に共有する。
要件⑥
居住支援法人と協力して、利用者に対して在宅での療養上必要な説明と指導を行う。
その上で(自立支援)協議会や保健・医療・福祉等の関係者による協議の場に対して、住宅の確保や居住支援に関する課題を報告する。
Q&A
Q 最終的に一人暮らしが実現しなかった場合でも加算は取れる?
A 取れます。
(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日) 問39)
Q 一人暮らしの実現に向けた支援とは具体的にどんなもの?
A 例えば次のような内容が考えられます。
・家事や健康管理など、日常生活スキルの向上のための指導
・予算管理や貯蓄のアドバイスなど、金銭管理のサポートや相談
・ トラブルへの対処や近隣住民やサービス提供者とのコミュニケーションスキルの向上のための指導
・退去後の住まい探しのサポートや相談
・退去後に利用する福祉サービス等の相談
など
Q 移行支援住居に、自立生活支援加算の対象とならない利用者が入居してもよいか。
A 対象者以外は入居できません。
(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日) 問43)
Q 移行支援住居において、サービス管理責任者のほかに
社会福祉士または精神保健福祉士の資格をもっている方を配置することでも良いのか
A NGです。サービス管理責任者であり、かつ資格を持った方を配置する 必要があります。
(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日) 問44)
さいごに
いかがでしたでしょうか。
ポイントをまとめると次のとおりです。
・自立生活支援加算は、一人暮らしを希望する障害者の自立を支援するために設けられています