【処遇改善加算】何に使える?NGな使い道に要注意!

はじめに

障害福祉事業所で働く従業員の賃金を改善するための処遇改善加算ですが、

どんな形であれとりあえず従業員に支給すればOKというわけではありません。

 

実はNGな使い道などもありますので、計画書や実績報告書を作成する前に

ぜひ以下を参考にしていただければと思います。

 

処遇改善加算のおさらい

処遇改善加算は現在、次の3種類があります。

① 福祉・介護職員処遇改善加算 

② 福祉・介護職員等特定処遇改善加算

③ 福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算

(以下ではこれらをまとめて「処遇改善加算等」と表現します)

 

処遇改善加算等を取るために、事業所は様々な条件をクリアすることが必要ですが、

そもそもこの加算の目的は「福祉・介護職員の方の賃金改善」です。

そのため、処遇改善加算等として国から受け取った給付費を事業所にプールすることはできず

受け取った額よりも1円でも多く従業員に支給し、賃金を改善しなければなりません。

 

では、この「賃金改善」とは具体的に何を指し、どんな形で支給すれば良いのでしょうか?

 

賃金改善の基本

原則、次の5つが賃金改善にあたります。

① 基本給のアップ

  時給・日給・月給を◯円アップ(昇給)させるなど。

  職員にとっても最も待遇が良くなった実感が湧きやすいですが、

  一度上げた基本給を後から下げることは不利益変更になる場合があるため、

  注意が必要です。

 

② 決まって毎月支払われる手当の新設

  資格手当、勤続手当、役職手当、職務手当など。

  処遇改善加算手当、特定処遇改善加算手当、ベースアップ手当

  などとしても問題ありません。

  ポイントは「毎月必ず支給されること」です。

  月によって支給しない場合がある手当はNGです。

 

③ 決まって毎月支払われる手当の増額

  考え方は上記②と同じです。

  もともと支給していた手当の金額を増やすことも

  賃金改善にあたります。

 

④ 賞与などの一時金の支給

  年に1~3回程度、まとめて賞与(ボーナス)として支給するなど。

  処遇改善一時金、特定処遇改善一時金などとしても問題ありません。

 

⑤ 賃金改善にともなう法定福利費等の事業主負担の増加分

  基本給や手当をアップした事によって自動的に増えた、

  健康保険料や雇用保険料などの事業主負担は賃金改善として認められます。

 

  事業主負担とは何か、またその計算方法等は下記の記事をご参考ください。

【処遇改善加算】法定福利費等とは?賃金改善後の事業主負担の増加分の計算方法

  https://ueda-takatoshi.com/shoguukaize-houteihukuri/

 

以上です。

 

なお注意点としては、就業規則や社内規定などに

「処遇改善加算等を原資として(使用して)支給する」ことを

きちんと根拠を書いた上で支給することです。

 

もし根拠が書かれた書類が無い場合、実地指導等で指摘を受けて

加算を全額返還するなどのペナルティを課せられてしまう場合があります。

 

就業規則や社内規定の書き方が分からないという方は

下記の記事をご参考ください。

処遇改善加算を手当や一時金で支払う際、就業規則に乗せなければならないの?

https://ueda-takatoshi.com/shoguukaizen-jyoseikin/

 

NGな使い道

それでは、どのような使い道は賃金改善と認められないのでしょうか。

キーワードは「労働の対価かどうか」です。

「労働の対価」とはつまり、職員の労働に対して会社が支払うものです。

賃金改善だと認められるのは「労働の対価」のみとされています。

先ほどの4つはすべて労働の対価です。

 

では労働の対価の対価ではないものの具体例をご紹介します。

※下記は多くの自治体がNGとしているものですが、

自治体によって解釈が違う場合があります。

最終的には必ず自治体が公表しているQ&Aや、直接問い合わせる等して確認の上

ご判断をお願いします。

 

・通勤手当(交通費)、住宅手当などの福利厚生

・退職手当、退職金の積立、退職手当共済制度の掛金

・健康診断の受診料

・物品購入のための費用

・慰安旅行の費用負担

・図書カード、商品券等の支給

・研修の参加費、教材費、交通費など

・資格取得のための費用(講習受講料など)

 

研修や資格取得の費用に関しては、厚労省のQ&Aでも明確にNGだと回答されています。

例えキャリアパス要件や職場環境等要件を満たすために行う取り組みに使用した費用であっても、

労働の対価ではないため賃金改善とは認められないようです。

 

(答)
処遇改善加算を取得した介護サービス事業者等は、処遇改善加算の算定額に相当する

賃金改善の実施と併せて、キャリアパス要件や職場環境等要件を満たす必要があるが、
当該取組に要する費用については、算定要件における賃金改善の実施に要する費用に含
まれない。

当該取組に要する費用以外であって、処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を行
うための具体的な方法については、労使で適切に話し合った上で決定すること。

平成27年度介護報酬改定に関するq&a(vol.2)(平成27年4月30日)

 

また、注意が必要なのが時間外手当、休日手当や夜勤手当(深夜手当)です。

これらは労働基準法上、支給が必要となっているため原則賃金改善としては認められていません。

 

ただし、労働基準法で決められている以上の金額を支給する場合

上乗せ分に限っては賃金改善に含めてOKです。

 

つまり、例えば労働基準法のルールに従うと

時間外手当を1万円支給しなければならない場合に

1万5000円支給したとします。

この場合、上乗せ分である5000円は賃金改善として認められるということです。

 

おすすめの使い道

もしこれから処遇改善加算等を取って賃金改善をしたい、あるいは

処遇改善加算等の金額が増えてきたので新しく支給するものを増やしたい方は

「処遇改善加算手当」や「処遇改善一時金」といった名目がおすすめです。

 

というのも、客観的にひと目で処遇改善加算等を使用していることが分かるため、

実績報告を作成する際に賃金改善の金額を集計しやすく、

実地指導などで賃金台帳を確認された場合にも役所の担当者へ説明しやすいからです。

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。

一見「従業員の処遇を改善」しているように思えるものでも、

労働の対価でなければ賃金改善と認められないことがお分かりいただけていれば幸いです。

カテゴリー: blog