介護・障害福祉の現場では、これまで国による処遇改善の取組が続けられてきました。
しかし、職員の賃金は他の産業と比べるとまだ差があり、人手不足が厳しい状況が続いています。
「人が集まらない」「せっかく育った職員が他業種に移ってしまう」といった悩みを抱えている事業者の方も多いのではないでしょうか。
こうした状況を受けて、政府は令和7年11月に決定した総合経済対策の中で、介護分野の人材確保をより一層進める必要があるとしました。
通常、介護・障害福祉の制度は3年ごとに大きな改正が行われており、そのサイクルに則れば、次の大きな改正は令和9年度です。
しかし、人材流出を防ぐための緊急的な対応として、令和9年度を待たず、令和8年度の報酬改定において処遇改善を行う予定とされています。
さらに、現場の負担を少しでも早く軽減するため、令和8年度の報酬改定を待たずに、「介護職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」(以下「賃上げ補助金」)が実施されることとなりました。
この賃上げ補助金では、要件を満たすことで職員1人あたり最大で月19,000円相当の支援が受けられるとされています。
なお、障害福祉分野についても、同じ考え方に基づき実施される事業となっています。
以下では、賃上げ補助金について、対象期間や対象事業者、要件などを詳しく解説します。
※令和7年1月16日時点で公表されている情報に基づいています。
補助対象期間 (介護・障害福祉共通)
令和7年12月~令和8年5月(6ヶ月分)
介護・障害福祉ともに「令和7年12月」を基準月とし、原則として基準月の介護報酬額✕交付率で補助額が計算されます。
介護事業者の場合
(1) 対象事業所
▼居宅・通所系サービス
▼施設・居住系サービス
▼その他対象サービス
(2) 補助額
補助額の計算方法は次のとおりです。
また交付率は、後述する要件をどのくらい満たせているかによってサービスごとに変わります。
詳細は下表をご参照ください。



介護保険最新情報 Vol.1454(令和7年12月25日厚生労働省老健局長通知)より抜粋
(3) 補助金の要件
大きく次の3つの要件があります。
ベースとなる①の要件を満たしていなければそもそもこの補助金を取得することが出来ません。つまり処遇改善加算の取得は必須ということです。
その上で、②・③を満たすか、あるいは③を満たすかにより交付率が変わってきます。
つまり、要件の満たし方としては次の3パターンとなります。
先ほどのサービスごとの交付率をもう一度見てみましょう。
例えば訪問介護では下表のように、要件①のみを満たす場合は交付率15.6%、最大(要件①・②・③すべて満たす)で交付率26.4%となっています。
これと基準月の介護報酬をかけ合わせることで、取得できる補助金の額が計算できます。

では、それぞれの要件をもう少し詳しく確認しましょう。
▼居宅・通所系サービスの場合
▼施設・居住系サービスの場合
▼その他対象サービスの場合
次の要件①・②のいずれかを満たすこと。
なお、その他対象サービスに関しては交付率はサービスごとに一律です。
(4) 補助金の使い道
大きく2つの使い道が補助対象となっています。
① 賃金改善経費
上述の交付率の表における、「賃金改善経費分」の交付率で計算された分の補助額は
介護職員の賃金改善に使用する必要があります。
(基本給、手当、賞与等。ただし退職手当は除きます。)
なお、要件②(生産性向上・共同化の取り組み)を満たす事業者は、交付率の表の5欄(訪問介護であれば6.0%)の交付率で計算された分の補助額を、事業所の判断によって介護職員以外の職種に配分することが認できます。
② 職場環境改善等経費
要件③(職場環境改善等の取り組み)を満たす事業者は、交付率の表の6欄(訪問介護であれば4.8%)の交付率で計算された分の補助額を、職場環境改善のための経費にあてることができます。
職場環境改善のための経費は、以下が想定されています。
・介護助手等を募集するための経費
・職場環境改善等(例えば、処遇改善加算の職場環境等要件の更なる実施)のための様々な取組を実施するための研修費等
※ただし、介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費(パソコンやソフトウェア等の機器購入費用)にあてることはできません。
障害福祉事業者の場合
(1) 対象事業所
▼居宅・日中活動・居住系サービス
▼その他対象サービス
(2) 補助額
補助額の計算方法は介護と同じく次のとおりです。
また、交付率はサービスごとに変わります。詳細は下表をご参照ください。

障発1226第7号(令和7年 12 月 26 日 )より抜粋
(3) 補助金の要件
▼居宅・日中活動・居住系サービスの場合
要件は大きく1つで、基準月(令和7年12月)時点で処遇改善加算を取得していることです。
その上で、取得している処遇改善加算の区分に応じて、別途追加の要件を満たす必要があります。
ただし、基準月時点で取得していない場合でも、補助金申請時に処遇改善加算を取得しているか
令和8年度中に取得することを誓約(これから取得すると約束)した場合、この要件を満たすとみなされます。
▼その他対象サービスの場合
要件は大きく1つで、基準月時点で処遇改善加算(Ⅳ)の要件を満たすことです。
ただし、基準月時点で各取り組みができていない場合でも、補助金申請時において令和8年度中に取り組むことを誓約した場合、この要件を満たすとみなされます。
職場環境等要件の各取り組みは下表をご参照ください。

(4) 補助金の使い道
障害福祉においては、障害福祉人材の賃金改善にのみ補助金を使用することができます。
(基本給、手当、賞与等。ただし退職手当は除きます。)
なお、基本給の改善が望ましいとされていますが、事業所の判断で手当や一時金等を組み合わせて賃金改善しても構いません。
提出方法・期限
令和8年1月現在では、まだ具体的な提出方法や期限は示されていません。
提出先は都道府県となる見込みですので、各都道府県のホームページの更新をお待ち下さい。
追加で情報が公表され次第、本記事も更新予定です。
参考:
介護保険最新情報 Vol.1454(令和7年12月25日厚生労働省老健局長通知)
「令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の実施について」
介護保険最新情報 Vol.1460(令和8年1月13日厚生労働省老健局高齢者支援課・老人保健課事務連絡)
「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業、ケアプランデータ連携システムの利用促進及び介護情報基盤の活用のための介護事業所等への支援策について」